所有者不明土地の発生を予防する観点から、不動産登記法を改正され、これまで任意とされていた相続登記の申請が、令和6年4月1日から義務化されます。ところで、未登記の建物は登記しないといけないのでしょうか。
未登記建物とは
相続財産調査をしていて未登記建物の存在に気がついたという方もいるでしょう。
土地や建物といった不動産は、その権利関係を公示するため法務局にある「登記簿」に登記(登録)され、誰でも閲覧できるようになっています。
未登記建物とは、この不動産登記簿に登記がされていない建物を指します。より正確に言えば、不動産登記簿の「表題部」の登記がされていない建物のことです。
不動産登記簿の記載項目は、建物の所在や床面積などの物理的な情報が記載された「表題部」と、その建物の所有権や抵当権などの権利に関する事項が記載された「権利部」に区分されます。
建物をはじめて登記する場合は、まず建物の表題登記を申請し、建物の表題部の登記記録(登記簿)を作成します。表題登記が完了した後に、所有権保存の登記を申請し、建物の所有者が記録されます。
通常住宅を建てる場合は、金融機関から融資を受けている場合が多いですが、抵当権などの担保の登記を入れる必要から、建物の登記はきちんとされますが、融資を受けずに建物を建てた場合などは、登記をしていないことがあります。特に田舎の家屋には未登記建物が非常に多いです。
未登記建物の確認法
建物が登記されているかどうかを確認するには、毎年5月頃に市町村からに送られてくる固定資産税納税通知書で確認することができます。
建物は登記されると、法務局が「家屋番号」を付番しますが、未登記建物には「家屋番号」がありません。納税通知書に添付されているの課税明細書を見ると、課税される土地・建物の明細や固定資産税評価額等が記載されています。家屋には「家屋番号」という欄があり、「1-6」などといった数字が記載されています。家屋番号が空欄になっている場合は、ほぼ確実に未登記の建物です。
確実に判断するには、法務局で登記尾事項証明書を請求してみるのもいいでしょう。未登記の場合は登記記録がないので、登記事項証明書は交付されません。
未登記建物は相続登記申請の義務化の対象になるのか
それでは、今回の法改正により、未登記建物は相続登記申請の義務化の対象になるのでしょうか。
結論としては、未登記建物は相続登記申請の義務化の対象にはなりません。相続登記申請の義務化に関する不動産登記法第76条の2の1項を読んでみると、以下のように書かれています。
(相続等による所有権の移転の登記の申請)
第76条の2 所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。
第1項にある「登記名義人」とは、登記記録の「権利部」に、権利者として記録されている者です(同法第2条第11号)。未登記の建物は、登記がされていないため、「登記名義人」はいません。したがって、上記の規定は適用されないということになります。
登記しないままでいいのか
では、登記しないままで良いかと聞かれると、それぞれの事情により自己判断するしかありません。
そもそも不動産登記法では、新築した建物又の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から1月以内に、表題登記を申請しなければならないとされており、この表題登記の申請義務に違反すると10万円以下の過料に処せられることになっています(同法第164条)。しかし、実際にこの理由で過料に処せられたという事例はなく、ほとんど形骸化しているのが現状です。
田舎にある資産価値のない建物だと、登記費用がもったいないという方もいるでしょう。また、古い建物でいずれ解体してしまう予定ならわざわざ登記する必要もないでしょう。
したがって、それぞれの事情により自己判断するしかありません。
(建物の表題登記の申請)
第四十七条 新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から一月以内に、表題登記を申請しなければならない。(不動産登記法)
未登記建物が気になる方は、土地家屋調査士や司法書士にご相談されることをお勧めします。建物表題登記は土地家屋調査士、所有権保存登記は司法書士が登記を行ないます。