遺産が自宅の自宅の土地建物しかない場合の遺産分割

 父が亡くなり、相続人は妻と長男、長女。父の相続財産は、自宅の土地建物しかなく、ここに今、妻と長男の家族が住んでいる、長女は嫁ぎ先の夫名義の家に住んでいるというう場合の遺産分割の方法。
この場合、父が遺言を遺してないのであれば、相続人は妻と長男、長女の3人で遺産分割協議をすることになりますが、法定相続分は、妻が2分の1、長男と長女が各4分の1ずつとなります。現実的な分割方法はあるのでしょうか。

現物分割と換価分割

 遺産分割の方法には、現物分割、換価分割、代償分割、共有分割の4つの方法があります。原則的な方法は、個々の財産をそのままの形で相続人に分配する方法(現物分割)です。ただし、遺産が自宅の土地建物しかない場合、これを分割して一部ずつ所有するのは物理的に困難です。建物は分割できませんし、土地は分筆して分けることもできますが、面積が小さくなり、資産価値を大きく損なうことになります。
 また、土地建物を売却して、売却代金を相続分に応じて分配する方法(換価分割)もありますが、自宅に住み続ける意思を有する方がいる場合は困難です。
 

代償分割

 現実的な法方法としては、代償分割という方法があります。
 相続人の一人が土地建物を取得する代わりに、その相続人の相続分を超えて取得することになった部分について金銭で他の相続人に支払う方法です。
 事例で言うと、長男が自宅の土地建物を全部取得し、その価額の2分の1に見合う金銭を妻に、4分の1を長女に支払うとか、あるいは、自宅の土地建物を妻が2分の1、長男が2分の1取得し、長男が4分の1に見合う価額を長女に支払うとかが考えられます。
 ただし、法定相続分を超える財産を取得した相続人が他の相続人に代償金を支払う必要があるため、それだけの支払い能力が必要です。

避けたい共有分割

 代償分割の協議がまとまらない場合、自宅の土地建物を相続人全員の共有とする形で分割する方法があります。この場合、長女の相続部分については、妻と長男が使用貸借または賃貸借するということも考えられます。
 共有分割は、公平な分割が可能で、財産を売却することなくそのまま残せるメリットがありますが、その土地建物の利用や売却について、共有者全員の合意が必要になるため、処分が困難になったり、共有者に次の相続が起こると権利関係が複雑化するというデメリットもあります。
 もし共有者の1人である長男が亡くなってしまうと、長男の持分を長男の配偶者と子さんがそれぞれ半分ずつ相続することになります。新たに共有者となる配偶者とお子さんとの意思疎通を図らなければ、不動産の売却などはできなくなってしまいます。

行政書士・社会福祉士竹内倫自のホームページ