相続人の確定に必要な戸籍

 相続の手続きでは、死亡した人の相続人を確定するに、被相続人の出生から死亡までの戸籍を取得し、確認する必要があります。戸籍は、婚姻や他市町村への転籍、法改正による戸籍改製などにより何回か作り直されます。通常出生から死亡までいくつかの戸籍があります。

1 戸籍とは

 「戸籍」とは、日本国籍の者について、氏名や生年月日と言った情報や、出生、親子関係、婚姻、離婚、養子縁組、離縁、認知、死亡などといった身分関係が記載された公文書のことで、「家」単位で国民を管理する日本独特の制度です。戸籍は戸籍法に基づく届出により記録され、本籍地の市区町村役場に保管されています。

2 戸籍の歴史

 現在のような全国的な制度となったのは明治5年式の戸籍からで、その年の干支にちなんで「壬申戸籍」と呼ばれています。華族、士族、平民などの族称の記載があるため大方は破棄されており、一部法務省が保管していると言われています。市町村には保管されておらず見ることはできません
 現在取得できる最も古い戸籍は明治19年式の戸籍です。戦前までは「家」を単位に戸籍が編成されていたため、戸主を中心に、その父母、祖父母、配偶者、子、さらに兄弟やその配偶者、子までが同じ戸籍に入っていました。
 戦後は、「夫婦及びこれと氏を同じくする子」を単位に戸籍が作っれるようになり、一つの戸籍には親子二世代までしか入れなくなりました。

3 本籍とは 

 戸籍に記載されている「本籍地」は、そこに住んでいる必要はなく日本の国土であればどこに本籍地を置いても構わないことになっています。、変更(転籍)も自由です。但し、戸籍謄本等の請求は本籍地の市区町村役場に対して行わなければならないので、遠方に本籍を置いている場合はすぐに取得することが困難なので注意しましょう。本籍と住所は一致している場合もありますが、全く別のものです。

4 筆頭者とは

 「筆頭者」とは戸籍の1番最初に記載してある人のことです。婚姻の際に、夫の氏を名乗ることとした場合は夫が、妻の氏を名乗ることとした場合は妻が戸籍の筆頭者となります筆頭者が死亡しても戸籍の筆頭者は変わりません

5 戸籍の種類

 戸籍には、現にその戸籍に在籍している人がいて、使用されている現在戸籍のほか、記載されていた人全員がその戸籍から除かれている状態の除籍、戸籍法の改正によって様式が変わったために閉鎖された改製原戸籍というものがあります。

①現在戸籍
  現に戸籍に在籍している人が記載されており、使用されている戸籍のことをいいます。戸籍には「本籍」「筆頭者氏名」、同じ戸籍に記録されている者の「名」「生年月日」「父、母の氏名」「出生地」「婚姻日」などが記録されています。

②除籍
 一つの戸籍に記載されている人も、婚姻や死亡や養子縁組などによって、その戸籍から消除されていきます。在籍者が誰もいなくなった戸籍を除籍といいます。なお、婚姻や死亡、養子縁組などによって戸籍から外れることも除籍といいます。

③改製原戸籍
 戸籍の様式は、これまで何回か法令により変更されています。戸籍が新たに書き換えられることを、「戸籍の改製」といい、改製前の戸籍を「改製原戸籍」(かいせいげんこせき)と言います。

6 戸籍の改製

 ①明治5年式戸籍(壬申戸籍)
 ・日本で1番最初の全国統一の戸籍です。華族、士族、平民などの族称、宗派、神社などが記載されていました。
 ②明治19年式戸籍
 ・現在取得できる最も古い様式の戸籍です。
 ・戸主を中心に、その父母、祖父母、配偶者、子、さらに兄弟やその配偶者、子など多数が同じ戸籍に入っていま 
  した。(※以下の戸籍の見本は、投稿者の先祖のものです。)


 ③明治31年式戸籍
 ・「戸主トナリタル原因及ヒ年月日」欄が設けられる。

 
 ④大正4年式戸籍
 ・「戸主トナリタル原因及ヒ年月日」欄が廃止される。戸主の事項欄に記載
 ・族称は華族、士族のみ記載となり、平民は記載しないことになる。


 ⑤昭和23年式戸籍
 ・「戸主」が廃止され、「筆頭者」となる。
 ・一つの戸籍に入るのは夫婦とその子までとなる。
 ・族称の記載の廃止される。


 ⑥平成6年式戸籍
 ・戸籍の情報がコンピュータで管理されるようになる
 ・横書きA4サイズの書式に変更

7 戸籍謄本と戸籍抄本

 戸籍の写しを取得する際に、「謄本」と「抄本」との2種類があります。「謄本」とは、原本の内容を全部写して作った文書のことであり、「抄本」とは原文の一部分のみを写した文書の意味です。
 現在のコンピュータ化後の戸籍では、戸籍に記載されている者全員の記載事項を証明したものを「戸籍全部事項証明」と呼び、戸籍中の一部の者だけを証明したもを「戸籍個人事項証明」と呼んでいます。

8 相続人の調査

 相続人は誰かを確定するには、被相続人の出生から死亡までの戸籍を取得し、確認する必要があります。まず、被相続人が亡くなった時点の住所地にある市区町村役場で住民票の除票を取得し、本籍地を確認します。
 次に、本籍のある市町村役場に行って、保管されている戸籍(現在戸籍、改製原戸籍、除籍謄本)すべてを請求し、死亡時から過去へ戸籍をたどっていくことになります。
 本籍地を移転している場合は、転籍後の戸籍に転籍前の本籍が記載されていますので、転籍前の本籍地にある市区町村役場に戸籍を請求し、出生から死亡までつながるよう戸籍を集めていきます。戸籍を請求する市区町村役場が遠方にある場合は、郵送による請求もできますので、市区町村役場のホームページで確認ください。
 こうして収集した戸籍を調査し、相続人を確定していくことになります。
 

行政書士・社会福祉士竹内倫自のホームページ