生前に準備しておくこと

 近年、さまざまなメディアで取り上げられるようになった「終活」。
 終活は遺された家族に負担をかけないための取り組みであることは広く知られています。しかし、具体的に何をすればよいのか、分からないという人も多く、実際に終活しているとう人は少ないようです。
「終活」と言うと、「人生の終わり」、「死」をイメージしがちですが、「終活」はいつか来る死の準備を行うためだけの活動ではありません。人生のゴールに向けて、残りの人生をどのように生きるかを前向きに考えるための取り組みでもあります。前向きに考えてはどうでしょうか。

(1)財産のリストアップ

人は、いつ、どこで、どんな災いに遭遇するかわかりません。十分な判断能力のあるときに、認知症になった後のことや死後のことを考えておくことが必要な時代になりました。
 突然、相続が発生すると、本人の預金などの詳細について家族が把握していない場合もあり、相続手続きに苦労されることがあります。生前に財産目録を作っておくことで、家族の負担も軽減されます。リストは、手書きでもパソコンを用いて作成しても構いませんし、インターネット上にあるデータをダウンロードして作成することもできます。
 特に、その際に使っていない口座や残高がわずかしかない口座、今後も使用しないだろうという口座は生前に解約しておきましょう。死後に家族が解約することになると続きが面倒になります。

(2)親族関係図を作成する

 現代では、親族関係が希薄になり、自分の親族関係をよく知らないという方も多いと思います。
あなたは、自分や家族のルーツを子どもさんと話したことがありますか?
祖祖父母、祖父母、父母から子へ、子から孫へとつながってきた命のつながり、そうしたつながりの中に自分の命があることを伝えることは大切なことです。
あなたが認知症になって記憶がなくなる前に子供に自分や家族のルーツを話してみてください。
親族関係図を作っておくことで、あなたが亡くなった後の相続人調査の手間も省けます。

(3)デジタル遺品を整理する 

 「デジタル遺品」とは、故人が遺したパソコンやスマートフォンなどに保存されているデータ、インターネットサービスのアカウントなどのことです。
ITCの普及によって、さまざまな情報をパソコンやスマートフォンで管理する人が増えています。パソコンやスマホのパスワードがわからない、インターネットサービスのアカウントがわからない、ネット銀行やネット証券口座の有無がわからない等の問題が発生する可能性があります。デジタル遺品の取り扱いをどうするのか、考えておく必要があります。
たとえば、Facebookでは自分が亡くなったときにアカウントをどうするのか決めることができます。Instagramの場合は、追悼アカウントに変更すれば、故人のアカウントの凍結や削除ができます。
あらかじめIDやパスワードをエンディングノートなどに記載し、重要書類と一緒に保管し、亡くなったときに家族が見つけやすくしておく配慮も必要です。

(4)お墓の問題

 先祖代々のお墓が故郷にあるが、自分が今住んでいる地域とは遠く離れたところにあるため、自分が埋葬されても、子や孫たちが墓参りに来てもらうのは難しい。子供がないため自分の亡くなった後にお墓を管理する人がいないといった事情で、最近は、改葬(お墓の引っ越し)や墓じまいをし、今住んでいる近くにお墓を建てる、納骨堂、樹木葬、散骨、永代供養などの埋葬方法を選択される方が増えています。
 墓じまいや改葬は、生前に祭祀承継者や親族と話し合っておく必要があります。

(5)空き家問題

 空き家の増加が全国的に問題になっています。
親の死亡により実家を引き継いだが、故郷に戻る予定もなく、そのまま放っておかれれている空き家が増えています。
人が住まなくなった家は劣化が進みます。老朽化し瓦の落下などの危険が生じたり、庭木が伸びて近隣に迷惑をかけるといったことも起こります。所有しているだけでも固定資産税がかかります。
売却、賃貸など利活用できればいいのですが、できない場合は解体することも考えないといけませんが、解体には多額の費用がかかります。
空き家をどうするか、今のうちに考えておかないと、次に相続する子どもたちに迷惑をかけることになります。
最近は「空き家バンク」と言って、売却や賃貸借できる空き家の情報を、ホームページなどで広く情報提供し、空き家の所有者とその空き家に興味を持った人をマッチングさせるというサービスを自治体が行っています。
まず、空き家の現状把握から行いましょう。そして、親族で今後のことを話し合うことから始めてみてください。

(6)エンディングノート

 エンデイングノートとは、人生の最期を迎えるのに備えて、自分に関する情報や希望を残しておくためのノートです。エンディングノートは、書き方や記載内容に決まりはありおません。遺言書のような法的な効果もありません。
メディアでもよく取り上げられるエンディングノートですが、実際を作成されている方はまだまだ少ないです。
エンディングノートを作っておけば、ご自身が判断能力を失くした時や死亡したときに、残された家族が何かの手続きや決定をする際に役立つことと思います。また、エンディングノートを作成することで、これまでの人生を振り返り、ご自身の価値観やご家族への想いなどを整理することができ、その過程において、残された人生をどう生きるかということについて気付きを得られることもあるでしょう。
最近ではインターネット上で無料でダウンロードできるものもありますので、どんなものかイメージがつかない方は参考にしてみてください。
 福井県医師会(福井県在宅医療サポートセンター)「福井県版エンディングノート(つぐみ)」を公開しています。

エンディングノートの項目は
 ①自分のこと 氏名、住所、生年月日、本籍など
 ②私の歴史  学歴、職歴、思い出など
 ③親族関係図 自分の祖先、兄弟などのルーツを伝える
 ④終末期医療 延命治療の希望
 ⑤終末期に連絡して欲しい人 家族が連絡すべき人をわかるようにしておく
 ⑥介護の希望 どこで介護を受けたいか
 ⑦遺言書   遺言書がどこにあるか
 ⑧葬儀、埋葬の希望 どのような葬儀、埋葬を希望するか
 ⑨家族、友人へのメッセージ メッセージを残しておきたい人があれば

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