終活でやっておくこと

 「終活」とは、「人生の終わりに向けた準備活動」のことを言います。 
 「終活」という言葉が登場した背景には、高齢化の一方で、家族の縮小し、単身世帯が増加する、頼れる家族がいない方が増えたために、自分の死について自己責任で考えないといけなくなったという社会的背景があります。あるアンケートによると、「なぜ終活をしようと思ったのか」の設問に、およそ9割が「家族に迷惑をかけたくない」と回答したとの結果が出ています。
 「終活」と言うと、「人生の終わり」、「死」をイメージしがちですが、「終活」はいつか来る死の準備を行うためだけの活動ではありません。限られた生を最後まで自分らしく生きること、そのゴールとしての<死>をどう迎えたいかという意思の問題です。自立できなくなった後、自分はどうしたいかという意思を持ち、元気なうちから準備をしておくことが大切です。

(1)財産のリストアップ

 万一の場合に備えて、現時点での財産目録を作成し、いざと言うときに家族が相続手続きの負担を軽減できるようにしておきましょう。本人の預金、不動産などの財産の詳細(マイナスの財産も含む)について家族が把握していない場合は、相続手続きに苦労されることがあります。生前に財産目録を作っておくことで、家族の負担も軽減されます。リストは、手書きでもパソコンを用いて作成しても構いませんし、インターネット上にあるデータをダウンロードして作成することもできます。
 その際に使っていない預金口座やカードは解約しておきましょう。死後に家族が解約することになると手続きが面倒になります。

(2)所有物の整理

 思い出のある遺品整理は家族にとっての精神的な負担が大きいものです。元気なうちから、使っていない不要なものは整理しておきましょう。

(3)親族関係図の作成

 現代では、親族関係が希薄になり、自分の親族関係をよく知らないという方も多いと思います。
 あなたは、自分や家族のルーツを子どもさんと話したことがありますか?祖祖父母、祖父母、父母から子へ、子から孫へとつながってきた命のつながり、そうしたつながりの中に自分の命があることを伝えることは大切なことです。あなたが認知症になって記憶がなくなる前に子供に自分や家族のルーツを話してみてください。
 親族関係図を作っておくことで、あなたが亡くなった後の連絡先や相続人調査の手間も省けます。

(4)デジタル遺品の整理 

 「デジタル遺品」とは、故人が遺したパソコンやスマートフォンなどに保存されているデータやインターネットサービスのアカウントなどのことです。
 パソコンやスマホのパスワードがわからないと、パソコンやスマホが開けません。最近はカメラで写真を撮ることもなくなり、故人の写真もスマホに入っている場合が多いでしょう。
 インターネットサービスのアカウントについても、あらかじめIDやパスワードを家族と共有しておくとか、エンディングノートなどに記載し、家族が削除申請などの手続きをしやすくしておく配慮が必要です。
 たとえば、Facebookでは自分が亡くなったときにアカウントをどうするのか決めることができます。グーグルアカウント一は定期間利用しないと削除される無効管理ツールがあります。対策できることはしておきましょう。

(5)お墓の問題

 先祖代々のお墓が故郷にあるが、今住んでいる地域とは遠く離れたところにあるため、自分が埋葬されても、子や孫たちが墓参りに来てもらうのは難しい。子供がないため自分の亡くなった後にお墓を管理する人がいないといった事情で、最近は、改葬(お墓の引っ越し)や墓じまいをし、今住んでいる近くにお墓を建てる、納骨堂、樹木葬、散骨、永代供養などの埋葬方法を選択される方が増えています。
 葬送のあり方も多様化してきました。樹木葬や散骨を希望する人も増えています。自分が亡くなった後にどこに遺骨を納骨するのか、家族と話し合っておく必要があります。

(6)空き家問題

 親の死により空き家になってしまった実家を相続する場合もあります。
 空き家を利活用できればいいですが、できない場合は売却や解体といったことも考えないといけません。解体には多額の費用がかかります。空き家をどうするか、今のうちに対策を考えておかないと、次に相続する子どもたちに迷惑をかけることになります。
 最近は「空き家バンク」と言って、売却や賃貸借できる空き家の情報を、ホームページなどで広く情報提供し、空き家の所有者とその空き家に興味を持った人をマッチングさせるというサービスを自治体が行っています。
 まず、空き家の現状把握(権利関係)から行いましょう。そして、親族で今後のことを話し合うことから始めてみてください。

(7)介護や終末期医療の希望

 国は地域包括ケア、在宅福祉を進めています。介護が必要になってもサービスを利用しながら可能な限り在宅で生活していくという施策です。介護が必要になったとき介護の担い手は誰なのか、在宅を希望するのか施設を希望するのか。介護サービスや費用などのの情報を得て、プランを立てておくことも必要です。また、終末期に治療回復が困難になっても、延命処置を希望するか、自分はどのように死を迎えたいか、家族に伝えておいたり書面に残しておくことも必要です。
 

(8)争族対策としての遺言書

 遺産分割の手続きには、相続人全員の協議が必要です。争族になる可能性があるならトラブルを回避するために遺言書を作っておくと良いでしょう。遺言書で本人の意思を明確にしておけば、相続人どうしの諍いを制し、相続の手続きをスムーズに行うことができます。遺言書を作った方が良いケース を参照ください。

(9)エンディングノート

 エンデイングノートとは、人生の最期を迎えるのに備えて、自分に関する情報や希望を残しておくためのノートです。エンディングノートを作っておけば、ご自身が判断能力を失くした時や死亡したときに、残された家族が何らかの手続きや決定をする際に役立ちます。
 最近はWebサイトから無料でダウンロードできるものもありますので、どんなものかイメージがつかない方は参考にしてみてください。
 各自治体でもエンディングノートを作成し配布しています。福井県医師会(福井県在宅医療サポートセンター)は「福井県版エンディングノート(つぐみ)」を公開しています。
 エンディングノートは、書けるところから書くのがコツ、そして定期的に見直すことが必要です。

行政書士・社会福祉士竹内倫自のホームページ