遺言と異なる遺産分割をすることはできるか

 遺言書が遺されていた場合、通常は遺言書の内容に従い相続手続きを行いますが、相続人全員が遺言書の内容と異なる遺産分割を希望する場合もあります。
 この点について判例は、被相続人が遺言で遺言と異なる遺産分割を禁じている場合を除いて、相続人全員(遺贈があれば受遺者も含む。)の同意があれば、遺言と異なる遺産分割をすることができるとされています。
 亡くなった被相続人の意思(遺言)よりも、生きている相続人の意思の方が、優先されるということでしょうか。

 例えば、自宅の土地建物は長男に、預金は妻に、株式は次男にという遺言があった場合、相続人3人の同意があれば、自宅の土地建物は妻に、株式は長男に、預金は次男に、というように、遺言と異なる遺産分割することができます。
 
 ただし、遺言執行者がいる場合は、問題があります。
遺言執行者は遺言の内容を執行することが職務ですから、相続人全員から遺言内容と異なる財産処分を相続人から求められても、遺言執行者は遺言に基づいた執行をすることができます。
 遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有します。相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができないとされています。(民法第1013条)。
 そのため、遺言執行者がいる場合に、遺言と異なる内容の遺産分割協議をする場合には、遺言執行者を加えて協議し、同意を得る必要があります。

 逆に言えば、遺言を確実に実現させるためには遺言執行者をつけておくべきということです。

行政書士・社会福祉士竹内倫自のホームページ