不要な土地を手放せる? 相続土地国庫帰属制度

 

 土地を相続したものの、「遠くに住んでいて利用する予定がない」「負動産を子どもに残したくない」「きちんと管理するのは負担が大きい…」。そのような理由で相続した土地を手放したいとき、相続した土地を国が引き取ってくれる「相続土地国庫帰属制度」が令和5年(2023年)4月27日から始まっています。この制度を利用するにはいろいろと条件があり、令和5年8月末の時点で全国で申請は885件、10月末時点で承認されたのは2件のみです。
 この制度の概要を紹介します。

1 制度の趣旨

 都市部への人口移動や地方での人口の減少と高齢化の進展などを背景に土地の所有意識の希薄化、土地所有に対する負担感が増加しており、相続された土地が所有者不明土地の予備軍となっていると言われています。
そこで、所有者不明土地の発生予防の観点から、相続等にが、法務大臣の承認により、土地を手放よって土地の所有権を取得した相続人して国庫に帰属させることを可能とする制度が創設されました。

2 利用できる人

 相続や遺贈で土地を取得した相続人のかたです。本制度の開始前(令和5 年(2023年)4月27日より前)に相続した土地でも申請できます。また、兄弟など複数の人たちで相続した共同所有の土地でも申請ができます。ただし、その場合は、所有者(共有者)たち全員で申請する必要があります。
 なお、生前贈与を受けた相続人、売買などによって自ら土地を取得した人、法人などは、相続や遺贈で土地を取得した相続人ではないため、申請ができません。

3 引き取ってもらえる土地の要件

(1)対象とならない土地
  ①建物がある土地
  ②担保権や使用収益権が設定されている土地
  ③他人の利用が予定されている土地
  ④特定有害物質によって土壌汚染されている土地
  ⑤境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地
   申請者が認識している隣接土地との境界(所有権界)が明確になっており、隣接の所有者が同意しているこ
  とが必要。

(2)審査の段階で該当すると判断された場合に不承認となる土地
  ①一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地
  ②土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
  ③土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
  ④隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
  ⑤その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地

4 費用

 申請する際には、1筆の土地当たり1万4000円の審査手数料を納付する必要があります。さらに、法務局による審査を経て承認されると、10年分の土地管理費相当額の負担金を納付しなければなりません。負担金は、1筆ごとに20万円が基本となります。

5 手続きの流れ

 ①法務局へ事前相談、②申請書の作成・提出、③要件の審査、④承認・負金の納付、⑤国庫帰属という流れになります。
 事前相談には、次のような資料を用意する必要があります。
  【資料の例】
  ・登記事項証明書又は登記簿謄本
  ・法務局で取得した地図又は公図の写し
  ・法務局で取得した地積測量図
  ・その他土地の測量図面
  ・土地の現況・全体が分かる画像又は写真
 申請は、申請者 本人が行わなければなりません。申請書の作成代行を弁護士、司法書士及び行政書士に任せることはできます。
 審査に要する期間は、約半年から1年程度が想定されています。

6 相談窓口

 土地が所在する都道府県の法務局・地方法務局(本局)の不動産登記部門 (登記部門)で受けています。相談はインターネットでの事前予約制です。
 以下の法務省ホームページを確認の上、予約してください。
  相続土地国庫帰属制度の相談対応について(法務省ホームページ)

行政書士・社会福祉士竹内倫自のホームページ