1 増え続ける空き家
総務省が発表した「住宅・土地統計調査」(令和5年)によれば、総住宅数のうち、空き家は900万2千戸と、2018年(848万9千戸)と比べ、51万3千戸の増加し過去最多となりました。総総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)は13.8%と、2018年 (13.6%)から0.2ポイント上昇し、過去最高となっているとのことです。
日本では戦後地方から都市部へ人口が大量に移動しました。空き家になっていくパターンの典型例は以下のようなケースです。
➀子供たちが都市部に出て、夫婦2人暮らしとなる。
②父親が死亡し、母親の一人暮らしとなる。
③母親が老いて一人暮らしが困難となり、施設に入所した結果、実家は空き家となる。
④母親が死亡し、実家は誰も住まなくなったまま空き家として放置される。
少子高齢化による人口減少で過疎化が進む地方では、空き家の数が増えています。親の死亡により実家を引き継いだが、故郷に戻る予定もなく、そのまま放っておかれれている空き家が増えています。都市部では、団塊の世代の相続が進むと、空き家は急増していくと予測されています。
2 住まない実家のデメリット
実家に住むこともせず、売却も賃貸もしない場合、次のようなコストが掛かります。
①家や庭のメンテナンスに手間や費用がかかる。
人が住まない家はすぐに荒れてしまいます。きれいに保とうとするならば、時々、掃除をしたり、窓を開けて換
気したり、通水したり、雑草を刈ったりする必要があります。
②実家に通う交通費、手間がかかる
実家が自分が住んでいる地域より遠方にあると交通費もばかになりません。時間もかかります。
③固定資産税がかかる
不動産を所有していれば、固定資産税がかかります。地方でも都市部にあればその負担は大きくなります。
3 空き家を減らすことが、国策に
空き家が社会問題になる中で、空き家問題を解消するべく制定されたのが、空き家対策特別措置法です。
空き家が社会問題になる中で、空き家問題を解消するべく制定されたのが、空き家対策特別措置法です。「空家等対策特別措置法」では、「そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等」を「特定空家等」と呼び、適正管理をしない所有者に対して、市町村が助言、指導、勧告といった行政指導、勧告しても状況が改善されなかった場合は命令を出すことができるようになりました。
令和5年(2023年)には「空家等対策特別措置法」が一部改正施行され、適切な管理が行われていないことにより放置すれば「特定空家等」に該当することになるおそれのある空き家を「管理不全空家」と呼びの所有者等に対し、管理不全空家が特定空家等に該当することとなることを防止するために必要な措置をとるよう指導、勧告をすることができることになりました。
「特定空家等」または「管理不全空家」特定空家等また管理不全空家で、市町村から指導、勧告を受け、改善されない場合は、固定資産税の住宅用地特例が適用されなくなくなります。固定資産税の住宅用地特例とは、住宅用地の固定資産税が200㎡以下の部分(小規模住宅用地)は固定資産税が6分の1に、200㎡を超える部分(一般住宅用地)については3分の1に、軽減される制度です。実家を空き家様態にしておくのであれば、管理不全空き家に認定されないよう管理を怠らないようにしておく必要があります。
将来実家が空き家になることが見込まれるなら、今から空き家の管理や活用について、家族で話し合っておくことが必要です。
空き家となった実家の管理や活用については、いくつかの選択肢を考えることができます。
(1)当面そのままにしておく
親がまだ施設に入居しており、戻ることはないけど親の生きている間はそのままにしておきたいという方もい
るでしょう。この場合は、維持管理に手間や費用がかります。
(2)売却する
需要のあるエリアであれば、不動産業者を通じて売却するのがベストでしょう。これにより維持費や税金の負
担を減らすことができます。行政が運営している「空き家バンク」に登録することで、買い手や借り手をさがす
こともできます。空き家を買い取ってくれる不動産業者もいます。
(3)賃貸する
家の状態によりますが、リフォームをして賃貸できれば、定期的な収入を得ることが可能です。ただし、この
場合修繕やリフォームに相当の投資が必要です。
(4)リノベーションして活用する
民泊施設として活用する。カフェ、オフィス、アトリエに改装することも一案です。民泊を行う場合には住宅
宿泊事業法による届け出や消防設備の整備などの整備が必要です。
(5)地域活動へ提供する
地元のコミュニティスペースや高齢者の集う場として提供することも考えられます。行政から補助金を得られ
る場合もあります。
(6)解体する
空き家をそのままにすると、老朽化し、瓦や建材の飛散や草木の繁茂等により周辺から苦情が持ち込まれるよ
うになります。そうなると最終的には解体するということにならざるを得ません。解体には相当な費用がかかり
ます。自治体によっては解体費の一部を補助しています。
行政書士は、空き家の所有者の特定や相続手続き、空き家の活用に関する許認可支援(民泊や福祉施設等)など
空き家対策についてアドバイスを行っています。また、必要に応じて、不動産業者やリフォーム業者、解体業者と
いった専門業者のほか、司法書士や税理士といった専門家などにつなぐことで空き家でお困りの方の相談に応じて
ます。空き家のことでお困りの方はお気軽にご相談ください。