空き家特例

 不動産を売って得た利益(譲渡所得)には所得税がかかりますが、「空き家特例」という制度をご存知でしょうか?
 相続した不動産(空き家)を売却した場合の譲渡所得を3,000万円まで控除してくれる特例です。
 利用できる場合は絶対に使うべき特例であることは間違いありません。
 今回は、この特例を利用するための要件を説明します。

1 増える空家

 少子高齢化による人口減少や核家族化の進展等に伴い、居住その他の使用がなされていない空き家の数が年々増   えています。総務省の「令和5年 住宅・土地統計調査」によると、総住宅数のうち、空き家は900万戸と、2018年(849万戸)と比べ、51万戸の増加で過去最多となっており、総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)は13.8%と、2018年(13.6%)から0.2ポイ ント上昇し、過去最高となっています。空き家数は、一貫して増加が続いており、1993年から2023年までの30年間で約2倍となっています。
 空き家が放置されると、建物の倒壊や建材の飛散や草木の繁茂による道路往来の阻害、景観の悪化等周辺の生活環境に多岐にわたる悪影響を発生させるおそれがあります。
 

2 空き家特例とは

 この空き家の発生を抑制するため、空き家を売却する際の税金を安くする制度が「空き家特例」です。
 空き家となった被相続人の住まいを相続した相続人が、耐震基準を満たした又は取壊しをした後にその家屋又は敷地を譲渡(売却)した場合には、その譲渡(売却)にかかる譲渡所得の金額から3,000万円を特別控除することができる制度です。
 これを、「被相続人の居住用財産(空き家)にかかる譲渡所得の特別控除の特例」と言い、通称「空き家特例」とも呼んでます。節税効果が大きいため利用できる場合は絶対に利用すべきです。

3 譲渡所得とは

 譲渡所得とは、土地や建物などの資産を譲渡(売却)することによって生ずる所得のことを言います。
譲渡所得の金額は、土地や建物を売った譲渡価格から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。
 譲渡取得=譲渡価格(収入金額)‐必要経費(取得費※+譲渡費用※)‐特別控除額
 ※取得費は、不動産の購入代金や、購入手数料などに、その後支払った改良費などを加えた合計額を指します。建
  物の取得費は、所有期間中の減価償却費相当額を引いて計算します。
  土地や建物の取得費がわからない場合は、譲渡価額の5パーセントを取得費(概算取得費)とすることが認めら
  れています。売却額が大きく、取得費が不明な場合は、税額が高くなる可能性が高いと言えます。
 ※譲渡費用は、不動産を売却するために支出した費用です。仲介手数料や測量費などが該当します。

 ちなみに、不動産の所有期間が5年以下で譲渡した場合(短期譲渡所得)の所得税は30%、住民税は9%で、合計39%、不動産の所有期間が5年超で譲渡した場合(長期譲渡所得)には所得税は15%、住民税は5%で、合計20%の税率となります。「空き家特例」の適用を受ければ、譲渡所得が発生しても3,000万円までは税金がかからないため、大きな節税になります。

4 空き家特例の適用要件

 空き家特例を適用を受けるには、以下の要件を満たす必要があります。
(1)空き家特例を適用できる人
   被相続人が死亡して空き家になった家屋およびその敷地を、相続または遺贈により取得した人です。
(2)特例の対象になる空き家・敷地
   特例の対象になる空き家は、以下の要件のすべてにあてはまるものでなければなりません。
 ➀相続開始直前まで被相続人が一人で居住していた家屋であること
 (譲渡が平成31年4月1日以後の場合は、被相続人が老人ホームに入居していた場合も適用可)
 ➁昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること
 ③区分所有建物登記がされている建物でないこと
  特例の対象になる敷地は、上記の要件を満たす空き家が建つ土地またはその土地の上にある権利です。
(3)空き家特例の適用要件
  空き家特例を適用するためのその他の要件は以下のとおりです。
 ➀相続開始日から3年経過した年の12月31日までに譲渡すること
 ➁売却代金が1億円以下であること
 ③相続時から譲渡時まで事業用・貸付用・居住用として利用していないこと。
 ④家屋は一定の耐震基準に適合していること
 ⑤親子や夫婦など特別な関係がある人への譲渡ではないこと
 空き家が一定の耐震基準に適合していない場合は、耐震リフォームを行ったうえで譲渡する必要があります。空き家を取り壊して更地として譲渡することもできます。
 このように、対象物件も適用要件も細かく定められているので、注意が必要です。

4 特例適用の手続き

 空き家特例の適用を受けるには、売却後、市町村で要件を満たしていることの「被相続人居住用家屋等確認書」の交付を受け、確定申告をする必要があります。「空き家特例」の適用期限は令和9年(2027年)12月31日までとなっています。

 空き家特例の適用に必要な書類
 空き家特例を適用を受けるときは、確定申告書に以下の書類を添付します。
 ➀譲渡所得の内訳書
 ➁対象家屋・敷地の登記事項証明書
 ③売買契約書の写し
 ④市区町村長から交付を受けた「被相続人居住用家屋等確認書」
 ⑤【家屋がある場合】耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写し

「空き家特例」の手続きはかなり煩雑です。福井市内の空き家について利用をお考えの方は当事務所までご相談下さい。

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