親なき後の問題への対応策

 障がいを持つ子供を抱える家庭にとって、その子の面倒を全面的にみている両親が将来その子を支えられなくなったら、その子の財産管理や身上監護を誰がどのように担ってくれるのだろうかということは切実な問題です。「親なきあと問題」と言われていますが、両親が亡くなってからでなく、両親の高齢化が進み、障がいを持つ子の面倒をみれなくなってきた時点で、「親なきあと」の問題が顕在化してきます。
 親なき後の問題への法的な対応策として、一般的に法定後見、任意後見、家族信託、遺言などの制度があります。

成年後見制度(法定後見)

 親は子が成人(18歳)に達するまでの間は親権者として子の身上監護及び財産管理を行うことができますが、子が成人になると親権者でなくなり親権の行使はできなくなります。そこで親が引き続き、子の身上監護及び財産管理を行っていこうとすると、成年後見制度を利用することが必要になります。成年に達してから身上監護及び財産管理を支援する制度としては成年後見制度しかありません。
 親が生きている間は後見人をつけなくても、親が事実上後見人の役割を果たすことができますが、親の片方が亡くなり1人になったときは、その親も相当な年齢になっていますから、その親が元気なうちから信頼できる人をの成年後見人の候補者として成年後見人選任の申立てをし、予め就任させておくことが考えられます。
 親が元気なうちは自身が後見人として子どもの面倒を見ることができますが、自分が健康に不安になってきたときや判断能力が低下してきたときに、誰に任せることができるのか。
 (一社)全国手をつなぐ育成会連合会が会員に行った「成年後見制度に関するアンケート調査」(2021年8月)によると、成年後見制度の利用は、1 割強にとどまっており、親や兄弟姉妹の親族後見が 70%を占めているとの結果がでています。

任意後見制度

 親自身が病気や認知症になったときに、障害ある子の支援をすることができなくなります。
 親自身が認知症などによる判断能力低下後に備え、信頼できる人を任意後見契約を交わし、この任意後見人に自分の身上監護ど財産管理にあわせ、障害をもつ子への財産の給付や「第三者のためにする契約」と福祉サービスの契約をすることもできます。(本人が受益の意思表示ができれば任意後見人が契約することができる。)
 任意後見制度は、自分が判断能力が低下した場合に備え、信頼できる人と任意後見契約を交わし、判断能力低下後自分の身上監護ど財産管理に関する支援を受ける制度です。
 契約内容を理解することができる程度の判断能力があれば障害を持った子自身が契約することも可能です。
 子が未成年の場合は、親が子の親権者の立場で、子を代理して任意後見契約を締結することも可能です。この場合は本人の判断能力は問われません。

家族信託

 家族信託は、収益不動産や現金など特定の財産を信頼できる家族に託し、自分が決めた目的に沿って、管理・処分してもらう制度です。
 例えば、頼れる兄弟がいればその者を受宅者とし、不動産の運用、処分を委託し、「障害もった子の生活、介護費として信託財産から毎月〇万円ずつ給付する」などとい信託契約を結びます。
 ただし、家族信託では身上監護を任せることはできません。また、障害を持った子に金銭は給付できても、そのお金を活用する能力がないと意味がありません。このため、法定後見制度や任意後見制度と併用すること必要に。

遺言

 子どもが複数あり、障害をもつ子のために多くの財産を遺したい場合は遺言をしておくことが必要です。遺言がないと法定相続分にしたがって相続されることになります。例えば、子が障害をもった子も含め2人いれば法定相続分は2分の1づつになります。障害をもった子が遺産分割協議をする能力がないと、後見人をつける必要が生じ手間とお金がかかります。遺言があれば、こうした面倒なことをせずに済みます。

行政書士・社会福祉士竹内倫自のホームページ