預けて安心!自筆証書遺言書保管制度

1 「自筆証書遺言書保管制度」とは?

遺言は、相続をめぐる紛争を防止するために有用な手段とされています。遺言の中でも、自筆証書遺言は、自書さえできれば遺言者本人で作成でき、手軽で自由度の高いものですが、遺言者本人の死亡後、相続人等に発見されなかったり、一部の相続人等により改ざんされるや、遺言書の真正や遺言内容をめぐって争いが怒るリスクが指摘されています。そこで、自筆証書遺言のメリットは損なわず、問題点を解消するための方策として、法務局において自筆証書遺言書を預かる制度、「自筆証書遺言書保管制度」が2018年に創設されました。

2 自筆証書遺言書保管制度の特色

 この制度では、自筆証書遺言書とその画像データが公的機関である法務局(遺言書保管所)で保管されます。原本は遺言者の死後50年間、画像データは遺言者の死後150年間保管されます。

 手数料も3,900円と、公正証書遺言作成にかかる費用と比べ安価です。

 また、あらかじめ希望すれば、遺言者の死亡を遺言書保管官が把握した際に、遺言者が定めた相続人等1名に対し、遺言書が保管されていることが通知されます。
 さらに、自筆証書遺言は、従来遺言者が亡くなった後、遺言書を開封する場合には、家庭裁判所の検認を受ける必要がありましたが、本制度では検認手続が不要です。
 一度保管所に預けた遺言書であっても、遺言者として内容をもう一度確認したい場合には、閲覧を請求することができます。また、遺言の内容を変更したい場合などには、保管の撤回を申請することで、遺言をつくり直すことも可能です。
 相続開始後、相続人は法務局において遺言書を閲覧したり、遺言書情報証明書の交付が受けられます!

3 自筆証書遺言書保管制度の注意点

 このように、自筆証書遺言書保管制度は便利な制度ですが、利用するにあたって以下の点に注意する必要があります。
 まず、本制度に基づいて遺言書を預けるには、遺言書保管官によって遺言書の確認が行われますが、この確認は外形的な記載(自署、押印等)についてのみで、遺言書の内容や有効性については確認されません。遺言書の記載事項や表現、有効性などに不安がある場合には、専門家に相談する、公正証書遺言の作成を検討するなどといった対策をおすすめします。

4 自筆証書遺言書保管制度の申請の流れ

 遺言書の保管申請は、以下のような流れで行います。
(1)自筆証書遺言を作成する。
  自筆証書遺言書は、下記の要件を満たしていることが必要です。
 ①遺言書の全文,遺言の作成日付及び遺言者氏名を,必ず遺言者が自書し、押印します。遺言の作成日付は、日付 が特定できるよう正確に記載します。
 ②財産目録は、自書でなくパソコンを利用したり、不動産の登記事項証明書や通帳のコピー等の資料を添付する方法で作成することができますが、その場合はその目録の全てのページに署名押印が必要です。
 ③書き間違った場合の訂正や、内容を書き足したいときの追加は、その場所が分かるように示した上で、訂正又は追加した旨を付記して署名し、訂正又は追加した箇所に押印します。
 本制度では、上の要件に加え、様式上のルールがあります。
 ①用紙はA4サイズで、上部5ミリメートル、下部10ミリメートル、左20ミリメートル、右5ミリメートルの余白を最低確保すること。
 ②片面のみに記載する。財産目録も同様です。
 ③各ページにページ番号を記載する。ページ番号も必ず余白内に書くこと。
  (例)1/2,2/2(総ページ数も分かるように記載する。)
 ④複数ページある場合でも,ホチキス等で綴じない。
   スキャナで遺言書を読み取るため、全てのページをバラバラのまま提出します。(封筒も不要です。)


(2)保管の申請をする遺言書保管場所を決める。
   遺言書の保管の申請は、①遺言者の住所地、②遺言者の本籍地、③遺言者が所有する不動産の所在地を管轄す   る遺言書保管所(法務局)の遺言書保管官(法務局の事務官)に対してすることができます。
(3)申請書を作成する。
   申請書の様式は法務省HPからダウンロードまたは、法務局窓口で入手できます。
(4)保管申請の予約をする。
  法務局で行う手続は、事前予約制になってます。必ず予約専用ウェブサイトか、電話または窓口であらかじめ予約してください。
(5)保管の申請をする。
   申請をするには、遺言者本人が法務局に出頭する必要があります。これは遺言書の偽造を防ぐためで、代理申  請はできません。遺言書の閲覧、保管の撤回の申請についても同様です。
(6)保管証を受け取る
   必要な書類に不足等がなければ、原本とその画像データが保管され、保管証が渡されます。この保管証には、遺言者の氏名、生年月日、遺言書が保管されている法務局の名称、保管番号が記載されます。なお、保管証は再発行
されませんので、大切に保管してください。遺言書の閲覧、変更、撤回、相続人などが交付請求をするときに必要です。

5 申請に必要な書類等
  法務局への保管申請は、申請書を提出して行います。申請書は、法務省ウェブサイトからダウンロードできます。申請書には、遺言者の氏名、生年月日、住所などのほか、遺 産を受け取る人(受遺者)の氏名や住所などを記載します。遺言者が死亡後、あらかじめ指定した方に対して通知を希望する場合は、申請書のうち、「死亡時の通知の対象者欄」にチェックを入れて、必要事項を記載すると、通知が実施されます。
 (1)保管申請書
 (2)遺言書
 (3)本籍と戸籍の筆頭者の記載のある住民票の写し
 (4)顔写真付きの官公署から発行された身分証明書(運転免許証、マイナンバーカードなど)
 (5)手数料として3,900円の収入印紙

 参照:預けて安心自筆証書遺言保管制度  

    遺言書保管申請ガイドブック  

 自筆証書遺言書保管制度は、法務局が遺言書の保管を安価でしてくれることや家族への通知など、大きなメリットがあります。これらの内容をよく理解して、自身の最期の意志を確実にご家族等に伝えるためにも、本制度の利用を検討してみてはいかがでしょうか。

 行政書士・社会福祉士竹内倫自のホームページ