贈与税が非課税になるケース7選

 贈与税は、個人から贈与により財産を取得した場合に、取得した方に課される税です。贈与税は原則として「暦年課税」という方式で算出します。1年間(1月1日から12月31日まで)に贈与を受けた額に対して課税されます。非課税枠として年間110万円が設定されています。つまり110万円以下の贈与の場合、贈与税はゼロとなります。年間110万円の非課税枠を活用すれば、税負担は大きく軽減されます。今回は贈与税が非課税になる次の8つのケースについて紹介します。

生活費や教育費の贈与

 扶養義務者間において生活費や教育費などに充てるため、必要な都度、直接これらの費用に充てるためにされた贈与については課税されません。例えば大学に進学した子どもへの仕送りとして、年間150万円がかかったとします。非課税枠は越えますが、仕送りは生活費ですから贈与税の対象にはならないのです。また、結婚費用や出産費用なども通常必要と思われる範囲内であれば贈与税はかかりません。

年間110万円以下の贈与

 上記の1月1日から12月31日までの1年間にした贈与110万円以下であれば贈与税は課税されません。贈与税の申告も不要です。
 ただし、贈与者が亡くなる前3年以内の贈与については、贈与者死亡時の相続財産に加算され、相続税が課税されます。(生前贈与加算)
 令和5年度税制改正で、この生前贈与加算の対象を、3年から7年に延長されました。この改正により、令和6年1月1日以降に贈与により取得する財産にかかる相続税について適用され、段階的に生前贈与加算の期間が延びます。最終的には2031年(令和13年)1月1日以降に発生する相続税から生前贈与加算の期間は7年になります。
 

相続時精算課税制度

 60歳以上の父母や祖父母から20歳(令和4年4月1日以降は18歳)以上の子や孫に贈与する場合、累計2,500万円までは贈与税がかからないという制度です。累計2,500万円を超えた部分については、一律20%の贈与税がかかります。
 この制度は、贈与税の負担がなく、または少ない負担で生前に大きな財産を子や孫に移転できるのがメリットです。ただし、相続時には、相続時精算課税制度の適用を受けた贈与を相続財産の価額に加算して相続税を計算し、それまでに納めた贈与税額があれば相続税額から控除されることとなります。
 なお、一旦相続時精算課税を選択すると、その後の贈与については暦年課税に変更することができなくなります。本制度を選択する場合には十分に検討したうえで判断する必要があります。
 令和5年度の税制改正において、相続時精算課税制度に年間110万円の基礎控除が創設されます。現行の制度は累計2,500万円(特別控除)まで贈与税がかかりませんが、今回の改正により特別控除とは別に年間110万円まで基礎控除が認められます。そのため、年間110万円以下の贈与であれば贈与税がかからず、かつ、累計2500万円の特別控除に含める必要がなくなります。

配偶者への居住用不動産の贈与

 婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、最高2,000万円まで非課税とすることができます。暦年課税と併用すれば2,110万円までの贈与を非課税とすることができます。「夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」という名称ですが、婚姻期間が20年以上の夫婦が使える制度なので、通称「おしどり贈与」と言われています。

住宅取得資金の贈与

 令和4年1月1日から令和8年12月31日までの間に、父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、住宅用の家屋の新築、取得または増改築等の対価に充てるための金銭を取得した場合において、省エネ等住宅の場合は1,000万円、それ以外の住宅の場合には500万円まで贈与税が非課税となります。

教育資金の一括贈与

 30歳未満の子や孫が直系尊属(父や祖父母)から教育資金の贈与を受けた場合、受贈者1人あたり最大1,500万円までが非課税となる制度です。教育資金には、入学金、授業料、入園料、保育料、施設整備費、通学定期代、修学旅行代や給食費も含まれます。学校以外の塾や習い事についても500万円まで非課税枠となります。
 この制度を使う場合は、贈与を受けた人が金融機関で教育資金口座を開設しなければなりません。金融機関を経由して教育資金非課税申告書が税務署に提出されます。贈与された資金の管理はこの口座で行われ、必要に応じて引き出せますが、その際には金融機関に教育費用の領収書を提出することになります。

結婚・子育て資金の贈与

 平成27年4月1日から令和7年3月31日までの間に、直系尊属(父母・祖父母など)から結婚や子育てのために一括で贈与された資金について贈与税が非課税になるものです。非課税になる限度額は贈与を受ける受贈者1人あたり1,000万円です。このうち結婚のための費用は300万円が限度額となります。
 この特例を使う場合は、受贈者が金融機関で「結婚・子育て資金口座」を開設しなければなりません。金融機関を経由して結婚・子育て資金非課税申告書が税務署に提出されます。贈与された資金の管理はこの口座で行われ、必要に応じて引き出せますが、その際には金融機関に結婚・子育て費用の領収書を提出しなければなりません。

 上記贈与税の非課税制度を7つ紹介しました。③から⑦については、細かい適用要件がありますので、実際に利用できるかどうかなどの具体的なことは、専門の税理士に相談ください。

行政書士・社会福祉士竹内倫自のホームページ