贈与とみなされる場合

 

 贈与とは、相手に「無償」で財産をあげることを指します。「通常の贈与」の場合、贈与する側が、贈与の意思を表示し、相手方が受諾することで効力が生じます(民549)。一方、贈与の意思がなくても、「実質的に相手に経済的利益を与えるような贈与と同様の効果」がある場合は、税法上「みなし贈与」と認定され、贈与を受けた側に贈与税が課税される場合があります。

(1)低額で不動産を譲り受けた場合
  保有する不動産を、時価よりも「著しく低い価額」で譲渡した場合、「時価と売却価額」の差額が「みなし贈
 与」に該当します。例えば、時価1億円の土地を5,000万円で譲り受けた場合、その差額分は贈与とみなされます。

(2)借入金等の債務を免除された場合
  債務者が、債務免除される場合や、第三者による弁済などにより利益を受けた場合も、債務免除額等につき「み
 なし贈与」と取り扱われます。例えば、子供の奨学金(借入金)を親が払う場合などです。

(3)保険料を負担した人と保険金を受け取った人が異なる場合
  自身が支払う生命保険の保険金の受取人が子供の場合、子供は、保険金をもらうことになるため、贈与税が発生
 します。死亡保険金の場合は、贈与税ではなく相続税となり、一定の非課税枠が認められています(みなし相続財
 産)。

(4)無対価での名義変更
  不動産や株式、生命保険の契約者につき、無償で名義変更を行う場合は、「みなし贈与」となります。例えば、
親所有の家を、子供名義にするとみなし贈与に該当します。

(5)無利息での金銭の貸付
  無利息での貸付も、「みなし贈与」となります。具体的な利率の規定はありませんが、

(6)預金の預入・貸付
  金銭の預け入れや、貸付した場合も「みなし贈与」と判定されるケースがあります。預け入れや貸付の事実が証
 明できるよう、契約書や覚書などを作成しておき、事実が証明できる必要があります。

(7)住宅ローン負担割合と持分の割合が異なる場合
  住宅購入した際、夫婦で住宅ローンを組んだにもかかわらず、住宅所有名義が夫名義の場合は、妻から夫への
 「みなし贈与」したものとされます。夫婦のローン割合と共有割合が異なる場合も同様です。

(8)離婚時の財産分与
  離婚の際の財産分与で得た財産には税金がかかりませんが、財産分与でどちらかが得た財産が、あまりにも多す
 ぎると「みなし贈与」となるケースがあります。

 上記のような、低額譲渡や、債務免除、その他経済的利益を受けた場合でも、以下の場合は「みなし贈与」に該当しません。
 当該利益を受ける者が、①資力を喪失して債務の弁済が困難な場合に、②その者の扶養義務者が、債務免除や弁済がなされた場合

 ※「みなし贈与」に該当する場合でも、「贈与税の非課税枠」の範囲内であれば、贈与税は課税されません。「み
 なし贈与」を回避するためには、以下の「贈与税非課税枠」を活用することが考えられます。
 ①暦年贈与の贈与税非課税枠(年間110万円)
 ②扶養義務者間の生活費・教育費の贈与税非課税
 ②住宅取得資金等の贈与税非課税枠(受贈者1人あたり、最大1,000万円)
 ③夫婦間贈与における配偶者控除の贈与税非課税(結婚20年以上、2,000万円まで)
 ④教育資金一括贈与の贈与税非課税枠(受贈者1人あたり、最大1,500万円)
 ⑤結婚・子育て資金贈与の非課税(受贈者1人あたり最大1,000万円まで)

行政書士・社会福祉士竹内倫自のホームページ