生前贈与加算の期間が7年に

贈与とは

 贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力が生じる契約です。(民法第549条)
したがって、相手が受諾しない贈与は無効です。例えば、親が独断で子供名義の口座に入金しても贈与にはなりません。いわゆる名義預金となり、親の財産に属したままです。贈与契約は口頭でも成立しますが、贈与があったことを証明するため、贈与契約書を作成しておくこと、銀行振込などでお金の流れを記録しておくことをお勧めします。

贈与税

 相続税は亡くなられた方から財産を引き継いだ時に課税され、贈与税は健在の方から財産を譲り受けた時に課税されます。贈与税は、個人から贈与により財産を取得した場合に、取得した人に課される税です。贈与税は、生前に贈与することで相続税の課税を逃れようとする行為を防ぐという目的があり、その意味で相続税を補完する役割を果たしています。

暦年課税制度

 毎年1月1日から12月31日までの1年間に財産の贈与を受けた人は、その贈与を受けた財産その財産の価額の合計額が基礎控除額(110万円)を超える場合は贈与税の申告をしなければなりません。逆に言えば年間110万を超える贈与を受けた人は贈与税の申告をしなければなりません。これを暦年課税制度といいます。

死亡前3年以内の贈与は相続財産に加算される

 ただし、贈与の額が110万以下であっても、死亡前3年以内に被相続人から相続人が贈与を受けた財産は、相続人の相続財産に加算(持ち戻し)され、贈与分を含めて相続税が計算され、支払った贈与税があればそれを相続税額から控除されます。これを「生前贈与加算」と言いいます。
 たとえば、相続開始前の3年間、毎年100万円ずつ生前贈与を受けていた場合、基礎控除の110万円以下なので贈与税は非課税ですが、贈与を受けた合計300万円は相続時に相続財産に加算され、相続税の課税対象となります。ですから、亡くなる前に、相続財産を減らす目的で駆け込みで贈与をしても、相続税対策にはなりません。
 生前贈与加算が作られた理由は、被相続人が死亡直前に駆け込みで贈与を行うことによる、相続税の負担回避を防止するためです。

令和5年度の税制改正で加算期間が7年に延長

 令和5年度税制改正で、この生前贈与加算の対象期間を、3年間から7年間に延長されることとされました。これまで、110万円以内の暦年贈与で、節税を考えていた人にとっては、課税対象期間が2倍以上に伸びたことになり実質的な増税になります。
 この改正は令和6年1月1日以降に贈与により取得する財産について適用され、段階的に生前贈与加算の期間が延びます。最終的には令和13年1月1日以降に発生する相続税から生前贈与加算の期間は7年になります。(ただし、延長された4年間に贈与により取得した財産の価額については、 総額100万円まで加算されません。)
 具体的な贈与の時期等と加算対象期間は次のとおりです。

    贈与者の相続開始日                    加算対象期間
令和6年1月1日~令和8年12月31日     相続開始前3年間
令和9年1月1日~令和12年12月31日令和6年1月1日~相続開始日
令和13年1月1日~相続開始前7年間

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