空き家を抑制するための税の特例

 少子高齢化による人口減少や核家族化の進展等に伴い、居住その他の使用がなされていない空き家の数が年々増えています。
 住宅・土地統計調査(総務省)によれば、空き家の総数は、この20年で1.8倍(448万戸→820万戸)に増加。空き家の種類別の内訳では、「賃貸用又は売却用の住宅」等を除いた、「その他の住宅」(いわゆる「その他空き家」)がこの20年で2.1倍(149万戸→318万戸)に増加しています。 なお、「その他の住宅」(318万戸)のうち、「一戸建(木造)」(220万戸)が最も多くなっています。 
 空き家が放置されると、建物の倒壊や建材の飛散や草木の繁茂による道路往来の阻害、不審者の忍び込みによる治安の悪化、火災の発生、景観の悪化等周辺の生活環境に多岐にわたる悪影響を発生させるおそれがあります。
 空き家を減らすことが、国策となっています。空き家の発生を抑制するため、不動産を売却する際の税金を安くする制度が、「被相続人の居住用財産(空き家)にかかる譲渡所得の特別控除の特例」、通称空き家特例です。

1 空き家特例とは

 相続または遺贈により取得した被相続人(以下「亡くなった人」)が居住していた家屋やその土地を一定期間内に売却し、定められた要件に当てはまる場合は、譲渡所得の金額から最高3,000万円を控除することができます。
 これを、「被相続人の居住用財産(空き家)にかかる譲渡所得の特別控除の特例」と言い、通称「空き家特例」とも呼びます。
 譲渡所得の金額は、下記の計算式のとおり、土地や建物を売った譲渡価格から取得費と譲渡費用を差し引いて計算し、所得を基準に税額が決まります。したがって、特別控除が使える場合は節税になります。
 譲渡取得=譲渡価格(収入金額)‐必要経費(取得費+譲渡費用)‐特別控除額
 取得費は、不動産の購入代金や、購入手数料などに、その後支払った改良費などを加えた合計額を指します。建物の取得費は、所有期間中の減価償却費相当額を引いて計算します。
 譲渡費用は、不動産を売却するために支出した費用です。仲介手数料や測量費などが該当します。
 なお、土地や建物の取得費がわからない場合は、譲渡価額の5パーセントを取得費(概算取得費)とすることが認められています。売却額が大きく、取得費が不明な場合は、税額が高くなる可能性が高いと言えます。

2 空き家特例の適用要件

 対象となる「亡くなった人の居住用家屋」は、相続の開始の直前時点において、亡くなった人が居住のために使用していた家屋で、以下の3要件をすべて満たすものです。
 ①昭和56年5月31日以前に建築されたこと
 ②区分所有建物登記がされている建物でないこと
 ③相続の開始の直前において亡くなった人以外に居住をしていた人がいなかったこと。(要介護認定等を受け、被
  相続人が相続開始の直前に老人ホーム等に入所していた 場合も、一定要件を満たせば適用対象となります。)

 そして、特例を適用するための要件は以下のとおりです。
 ①譲渡人が、相続または遺贈により空き家を取得したこと
 ②空き家を売るか、空き家とその敷地を売る場合は、相続のときから譲渡のときまで事業、貸付け、居住などに使
  用しておらず、譲渡時に空き家が一定の耐震基準を満たすこと
 ③相続または遺贈により取得した空き家を取壊したあとに、その敷地を売る場合は、相続のときから譲渡のときま
  で事業、貸付け、居住などに使用しておらず、取り壊し後にほかの建物や構築物などを建築していないこと
 ④相続開始から3年を経過した年の12月31日までに売ること
 ⑤売却代金が1億円以下であること(相続人が複数の場合は1人につき1億円ではなく、合算した売却代金が1億円以
  下であること)
 ⑥売った空き家等について、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例※や収用等の場合の特別控除など、ほかの特
 例の適用を受けていないこと

  ※取得費の特例 相続後3年10カ月以内に相続財産を売却した場合に、納付した相続税額の一部を取得費に加算することにより、譲渡所得
          にかかる税金が軽減される特例。

 ⑦同一の亡くなった人からの相続または遺贈により取得した空き家等について、空き家特例の適用を受けていない
  こと
 ⑧空き家等の売却先が親子や夫婦など特別の関係がある人でないこと
 このように、対象物件も適用要件も細かく定められているので、注意が必要です。

3 特例適用の手続き

 空き家特例の適用を受けるには、売却後、市町村で要件を満たしていることの「確認書」の交付を受け、確定申告をする必要があります。「空き家特例」の適用期限は令和9年(2027年)12月31日までとなっています。
 「空き家特例」の手続きはかなり煩雑ですので、空き家特例の利用を検討する際は、税理士等に相談することをお勧めします。

行政書士・社会福祉士竹内倫自のホームページ