借地権の相続
借地権とは、「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」(借地借家法2条1号)のことですが、借地権は借主の死亡によっても消滅するのではなく、一種の財産権として相続の対象となり、相続人は借地人としての地位をそのまま継承することになります。相続による継承に、地主の承諾は必要ありません。
遺産分割の対象に
借地権は、借地上の建物と合わせ、遺言により分割方法の指定がなされていない限り、相続開始により相続人の共有状態となります。このため、最終的な借地権の取得者を確定するためには、相続人によって遺産分割協議が必要になります。
借地権の分割方法
遺産分割の方法としては、現物分割、代償分割、換価分割、共有分割などの方法が考えられます。
まず、相続人の中にその建物を利用する意思のある者がいないのであれば、換価分割を検討します。地主との話し合い、借地権付き建物を買い取ってもらい、その代金を相続人で分けることになります。地主が買取に応じない場合は、地主の承諾を得て、建物と借地権を第三者に売却することになります。この場合、地主への相応の承諾料が必要です。
相続人の中にその建物を利用しようとする者がいる場合は、換価分割はできないため、代償分割の方法をとることになります。建物を利用しようとする者が、建物と借地権の全部を現物で取得し、自己の法定相続分を超える部分の価値に見合うだけの金銭を他の相続人に代償金という形で支払います。
実際の遺産分割で多いのは、借地上の建物と借地権を特定の相続人が取得し、借地権を取得した相続人が地主に対して地代を支払っていくというパターンです。
特定の相続人に借地権を取得させずに、複数の相続人で借地権を共有する共有分割も可能ですが、この場合、借地の管理方法についてトラブルが発生する可能性があることから、適切な方法ではありません。
借地権の評価
借地権の相続税評価額は、更地(自用地)の評価額に借地権割合を乗じる手法が、簡易な評価方法として一般的に利用されています。この借地権割合は路線価や評価倍率表に従って算出されます。
自用地としての価額×借地権割合=借地権の評価額
借地権の名義変更はしなくてもいい
建物の名義変更は行う必要がありますが、借地権については名義変更を行う必要はありません。「借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。(借地借家法第10条第1項)」ため、あえて名義変更の登記をするまでもなく、建物を所有しているだけで第三者に対抗できるためです。